11/12(月)「九州シェアリングサミット2018 in 佐賀」を、公共財のシェアリングを積極的におこなっている、佐賀県武雄市の「武雄市図書館」にて開催した。九州シェアリングサミットは、今年の5月に福岡で第1回を開催してから、7月に熊本、9月に鹿児島、10月に宮崎、そして11月の佐賀の開催で5回目を迎えた。
第1回・第2回・第3回・第4回の様子はこちら
第1回
300人以上が参加!豪華なセッションで盛り上がりを見せた「九州シェアリングサミット2018」を振り返る
第2回
熊本初開催!!「九州シェアリングサミット in 熊本」を振り返る
第3回
今回は「インバウンド」!九州第3弾!「九州シェアリングサミットin 鹿児島」を振り返る
第4回
大盛況!九州シェアリングサミットin宮崎 インバウンド観光客の集客×シェアリング事業での受け皿つくり
第5回目となる九州シェアリングサミットのテーマは、前回に引き続き「インバウンド観光客の集客×シェアリング事業での受け皿つくり」。
今回のサミットも、マクロミル社に協賛いただいた。
第1セッション スペシャル対談『肥前窯業圏の観光ポテンシャルとシェアリングエコノミー事業創造の可能性』
登壇者小松政 氏
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スペシャル対談として、佐賀県武雄市長の小松政氏と、有田町長の松尾氏、モデレーターの九州シェアエリングエコノミー推進協会代表の森戸が登壇。まずはじめに、武雄市と有田町、それぞれの取り組みを紹介した。
小松氏「市民の皆さんが気軽に立ち寄れる開放的な庁舎を目指し、庁舎内に市民エリア(1階ホール・3階トレインビュー)を設けた。現在、この市民エリアは、世代を超えた学びの場として利用されている。」
松尾氏「有田町は商人の町。有田町は、昔から今に至るまで商人が商売できるよう、商人に軒先を貸してきた。有田町は、陶器市の影響もあって、欧米系の旅行者が多いが、宿泊施設があまりないため、武雄市と協力していきたい。」
その後、小松氏と松尾氏の両者に、モデレーターの森戸を加えた、”現状”と”展望”についてのディスカッションがおこなわれた。
『県』ではなく『文化』でエリアを捉えるという考え方に加え、観光で外貨を稼ぐ、地域内でクリエイターを育成し、仕事を依頼することで、地域経済を活性化する必要がある、と締めくくられた。
第2セッション『佐賀を更に面白くするためのヒト・モノ・カネ・情報の集め方』
登壇者木藤 亮太 氏
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木藤氏は、宮崎県日南市のテナントミックスサポートマネージャーの際の、油津商店街の再生事業について話した。
木藤氏「宮崎県日南市の油津商店街を、リノベーションやコンテナ店舗の出店などで活性化させた。
商店街に来る目的を『買い物』だけでなく、『交流』できる空間も作ることで、商店街は『みんなのもの』と意識させ、今の時代を起点とした、新しい意味での商店街作りをおこなった。」
地域を支援する様々な事業を手掛ける、株式会社トラストバンク代表取締役の須永氏。「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」の中の「カネ」に注目した、ふるさと納税について説明した。
須永氏「外貨を稼ぐことはとても重要で、ふるさと納税も外貨の1つである。地元にお金が落ちているかどうかは極めて重要なことである。
課題解決の資金調達は、ふるさと納税でおこなうのも一つの方法。
ふるさと納税は、クラウドファンディングと同じであり、ふるさと納税が伸びているということは、地場産業が発展しているということである。」
株式会社クロスボーダープランニングの原氏は、自身の取り組みの中で、上海にあるインキュベーション施設『COCOSPACE』を視察した際の話を元に、佐賀におけるベンチャー企業誘致の話を展開した。
原氏「COCOSPACEでは、ビジネスファシリティ+創業投資をおこなっている。
オフィスの入居審査を通過し、基準を満たせば、200万元以上の投資を受けられるというもの。
AI技術やIoT先端技術は、中国が世界トップであり、技術をもったベンチャー企業を、佐賀県産業スマート化センターに誘致しても良いと思う。」
第3セッション『シェアリングエコノミーの潮流』
登壇者石山 アンジュ 氏
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内閣官房シェアリングエコノミー伝道師の一人でもある石山氏は、2018年のシェアリングエコノミーのハイライトと、2019年に向けたシェアリングエコノミー協会の施策を紹介した。
石山氏「2018年はシェアリングエコノミー活用推進事業として、シェアリングシティーのまちづくり活性化を図った。多久市もその一つ。また、IDが1つあればどこのシェアハウスにも住むことができ、移住が厳しくても拠点となりうるバリ島を参考とした「他拠点居住とシェアの可能性」、災害時の駐車場シェアなどの「災害とシェアの可能性」について着目してきた。
2019年は「Platform企業 vs 個人」という視点で、NPO型、官民ハイブリット型、個人組合型(co-op)のシェアサービスに注目している。また、9月に新設したシェアワーカーをサポートする個人会員制度は、1万人規模の入会を目指す。シェアx 評価システムをどう考えるか、信頼の概念の変化も重要なファクターの一つである。」
一方、Airbnbやトリップアドバイザー、TABICAなどとの連携を次々と発表している、ANAホールディングスでデジタルデザインラボ チーフ・ディレクターを務める津田氏は、同社がシェアリングエコノミーに注目する理由と今後について、次のように説明した。
津田氏「ANAがシェアリングエコノミーに注目した理由は2つ。1つ目は、ANAの利用者層はビジネス層がほとんどを占めており、利用者層のすそ野をひろげたいこと、2つ目は、日本国内の人口減少、出生地の変化から、総需要が減少する日本国内線マーケットを視野に入れ、訪日需要の国内線への取り込み ローカル地域の活性化に着目していること。
シェアリングエコノミー事業者に、もっとANAの取り組みを理解してもらい、シェアリングというプラットフォームを一緒に運営する仲間を増やしていきたい。
少子化に合わせた次世代のプラットフォームを探し、最終的には航空需要を増やす。」
第4セッション『シェアリングエコノミーで実現する地方創生』
登壇者徳永 隆信 氏
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幸楽窯5代目窯元の徳永氏は、地方創生において『関係資産』を作ることの重要性について語った。
徳永氏「田舎は、長年培われた関係資産を生かすしかないため、シェアリングエコノミーを活用して、また来てもらえる観光を作る必要がある。
その為に、歴史と伝統と未来が交わった関係を作らなければならない。
地方創生におけるシェアリングエコノミーの目的は、『儲ける』ためでなく、『関係資産』を作ることである。
幸楽窯では、観光客、クリエイター、地元の人達と交流し、作品を創作している。」
徳永氏の取り組みに続き、幸楽窯で長期滞在型作陶プログラムのコーディネーターをしている、ピメンタ氏が自身の取り組みについて語った。
ピメンタ氏「幸楽窯で、焼き物のトレジャーハンティングを企画し、幸楽窯にあるゲストハウスで、有田町に住む様々な国籍の人達と夕食を共にするなど、交流の場を作った。
この5~10年で、日本で作品を作りたいというデザイナーやアーティストが、36人くらい訪れた。」
内閣官房シェアリングエコノミー伝道師としても活動する、佐賀県多久市商工観光課商工観光係長の石上氏は、多久市の観光、市民の満足度を向上させるための施策を、以下のように説明した。
石上氏「佐賀県多久市の取り組みは、仕事をどうやって受注するかに焦点を当てている。
『労働』と『観光』を作るため、シェアリングシティ宣言をおこない、クラウドワークスやTABICA、ANYTIMESなどの事業者と連携。
市民に、クラウドソーシングでお金を稼ぐ力をつけてもらうために、シェアリングエコノミーに関するセミナーの開催や、クラウドワークス体験会をおこなった。
また、女性が自由に使えるお金を増やして、活動の幅を広げてもらうため、女性の就労支援を実施した。働きたいと思ってる女性のサークルを作り、就労後にもフォローとして、定例会などを実施することで、仕事のモチベーションを向上させた。」
九州周遊観光活性化コンソーシアムの代表を務める西岡氏は、総務省からIoTサービス創出支援事業の委託を受け実施した、「シェアリングエコノミー型 九州周遊観光サービスモデル事業」について紹介した。
西岡氏「キャンピンカーを基点に、周りの観光名所に訪れてもらうことで観光支援に繋がる。
カーシェアもスペースシェアも右肩上がりで、車の所有率は佐賀だと0.6台/人で、九州では1位である。
車中泊専用の駐車場で、気軽にアウトドア体験ができるサービス『車泊』は、Iotサービスの創出支援事業として、7つの自治体と連携している。
車中泊は場所の問題などあり、関東では社会問題となっているため、ルールや防災計画などを組み込まなければならない。
既存サービスを組み合わせたビジネスモデルで、新しい旅のカタチを作り、ブランド化していく必要がある。
着地型観光の拠点に、車中泊できる場所を増やす必要がある。
『車泊』によって、その地域でしか体験できないことを伝えなければならない。」
12/05(水)には第6回となる九州シェアリングサミットが長崎で開催される。
概要はこちら。
イベント名:九州シェアリングサミット2018 in 長崎
開催日:12月5日(水)
場所:佐世保市中央公民館
イベントページ:https://peraichi.com/landing_pages/view/nagasaki
インバウンド観光客の集客 × シェアリング事業での地域活性化のための受け皿つくり